第15章 硝子さんの代理*
side.名前
医務室のドアが“バンッ”と乱暴に開け放たれる。
その音に驚いた私は、ビクッとして思わず手を止めてしまう。
「悟さんっ!?」
扉を開けたのは悟さんで。
彼はズカズカと医務室に入ってくると、私をぎゅっと抱きしめた。
「悟さん?どうしたの?」
「もう限界っ!お医者さんごっこは僕としかダメッ!」
「へっ?」
何を言ってるの?
「ほらほら。閉店だよ。帰った。帰った」
悟さんは並んでいる怪我人を、シッシッと追い払う。
えっ?
何で帰るの?
皆、怪我してるんじゃないの?
呆然としていると、悟さんに抱えられる。
「どうしたの?何が起こったの?」
「アイツらは仮病だよ。僕の妻が他の男に触れるのが嫌なんだ」
悟さんは私の首に擦り寄って、不貞腐れた。
その姿が可愛くて、私は悟さんの白いふわふわの髪の毛を撫でる。
「じゃあ一緒に当直する?」
「うん」
「悟さんって甘えただよね」
「名前にだけだもん」
私にギュッとしがみつく悟さんが可愛い。
私は彼の頬を包んでキスをする。
いつ急患がくるか分からないから。
エッチはできないけど、これくらいなら許されるよね。