第13章 僕の誕生日(20歳)③*
side.名前
「名前ちゃん。ありがとうね」
「いえ。楽しいです」
「こんなに可愛らしい若女将がいたら、また有名になっちゃうわ。本当に若女将になっちゃわない?」
「えっ?」
戸惑っていると、後ろからふわりと抱きしめられる。
私の大好きな香り。
「女将さん。この子は僕の可愛い妻なんで、他を当たってくれますか?」
「ふふっ。随分と優秀なボディガードね。残念だわ」
「それはそうと。館内はもう大丈夫ですよ」
「悟さん。もう終わったっちゃたの?」
「うん」
へらりと笑う悟さん。
「そっか。私はもう少しここにいるね」
「そう?」
「うん。なんとか祓えてるし」
「そっか。じゃあ僕は少し庭園を見て来てもいいかな?」
「分かった。気をつけてね」
「うん」
悟さんはまたシュッと消えてしまう。
「名前ちゃんのご主人は凄いわね」
「私もそう思います」
私も頑張らなくちゃ。
次々にチェックアウトしていくお客様にご挨拶をする。
そして、漸く本日のご予約のお客様が全員おかえりになった。
ほっと胸を撫で下ろす。
今まで呪いを祓うことなんてなかったから。
緊張が解けたようだ。