第2章 男性客の正体は?
彼は、バツが悪そうに目を逸らした。
「、、、とりあえず、立てるかァ?」
彼が安に手を差し出した。安はそれに捕まって立ち上がる。しかし、そのままへなへなと座り込んでしまった。
「腰、抜けちゃったみたいです。」
目の前に鬼が出たのだ。腰の一つや二つ抜けてもおかしくない。
「怪我はねぇか?」
「怪我は大丈夫です。どこも痛くないです。」
ならいい、と彼は安の頭をポンポンした。思わぬ優しい手に、安の心臓がドキリと音を立てた。
「わりぃ。」
何が、と聞き返す前に、彼にお姫様抱っこで持ち上げられる。
「お兄さん。重いから、下ろして。平気だから。」
「歩けねぇんだから大人しくしてろ。口閉じねぇと舌噛むぞ。」
そう言った彼は、またすごいスピードで駆け出した。