第2章 男性客の正体は?
安は強い風に目を閉じる。と、体がふわりと持ち上がった。
え?、と安が目を開けると、見覚えのある顔が見えた。
「ぎゃ〜〜〜」
鬼の叫び声がこだまする。振り上げた腕の肘から先がなくなっている。
「おはぎのお兄さん?」
確かにそれは風月庵におはぎを買いに来ていた、目つきの鋭い、あの男性客だった。
「隠れてろォ。」
彼は着地すると、安を下ろし、鬼に向き直った。
彼が刀を持っているのがわかった。この刀で鬼の腕を切ったのだろうか。
彼は刀を構え直すと、安には見えないスピードで走りだした。
次の瞬間には、鬼の首が落ちていた。
「大丈夫かァ?」
鬼は灰になったように、崩れていった。
彼が安に近づいてきて、しゃがんだ。
しっかり顔を見ても、やはりおはぎのお兄さんだ。
安は今目の前で起こった出来事を理解しきれずに、彼を見つめることしかできない。
「えっと、おはぎのお兄さん、ですよね?」
安の口からは、そんなとぼけたような質問しか出てこない。
「、、、あぁ、まぁ、そうだな。」