第4章 看板娘の告白
「ごめんなさい、急に。本当に時間、大丈夫ですか?」
不死川は、気にするな、と安の頭をポンポンする。
「もう、子供扱いして」
安がほっぺを膨らませる。不死川は眩しいものでも見るように目を細めた。
「、、、なんかあったのかぁ?」
二人は川沿いの道を歩いている。人はまばらだ。
「あの、どうしても聞いて欲しいことがあって、、、」
「、、聞いて欲しいこと?」
「はい、、、あの、、、」
安が立ち止まる。それに気がついて、不死川も立ち止まり、安の方を向いた。
「、、、好き、なんです。」
「、、、はぁ?」
不死川は意味がわからないとばかりに言う。こいつは何を言ってるのかと。
「実弥さんが好きなんです。ちょっと顔は怖いけど、優しいし。おはぎが好きなところも可愛いし。強い鬼狩様だし。そういうところ、全部ひっくるめて好きなんです。」
安が一生懸命に想いを伝えてくる。不死川はあまりにも予想外のことを言われて、どう反応したらいいかわからない。
「ごめんなさい、困らせて。いいお返事が頂けないのはわかってます。でも、どうしても最後に想いを伝えたくて。」
安の瞳から涙が溢れた。一度溢れた涙は、次から次へと溢れ出る。。
「、、、縁談話しがあるんです。本当は16になった頃からあったんですが、まだ店で働きたいから、と全て断っていたんです。でも私ももう18になりました。そろそろ断ることも出来ません。」
特に安を気に入っているのが茶道の家元だ。自分の息子の嫁にと、何度も何度も縁談を申し込まれている。
「、、、あなたに会えて良かった。あなたを好きになって良かった。あなたには迷惑だったと思いますが。
どうかお元気で。おはぎ、また買いに来てくださいね」
安は言いたいことを言い終えた。ぺこっ、とお辞儀をすると、来た道を駆け足で戻る。