第7章 同期達の証言
「お前って、実は格好いいよな。」
「気づくのがおっせーよっ!」
珍しく褒められ、照れた村田が錆兎の腕をおもいっきり叩いた。
「いてっ!」
叩かれた腕を擦りながら、村田を軽く睨む。褒めるとすぐ調子に乗る。そんな明るいところも、村田の長所ではあるが。
「村田、そのやっかみの件、音羽に話したことあるのか?」
「そりゃぁ、言ったよ、気にすんなって。でも音羽のやつ、自分が好意を寄せられる人間だと思ってないから、信じないんだよ。」
村田が肩を竦めて、ため息をついた。
「アイツ、ずっと周りの奴らに認めて欲しくて、鬼殺にばかり人生を掛けてきたからな。自分の事になると疎いんだよ。」
「…そうか。」
錆兎はそう呟くと、目線を下に下げた。
きっと、その責任の一端は自分にある。音羽の承認欲求が強いのは、選別の時の、錆兎自身の振る舞いのせいだ。
(なんか…段々と落ち込んきたな。)
人の気持ちも考えずに、がむしゃらに自分の信念を貫き通してきたツケが、今に来てる。
(そういや落ち込むってことも、音羽への想いに気付くまで、経験になかったな。…本当にアイツは、俺に色々な経験をさせてくれる。)
そんなことを考えながら、黙って俯いていると、
「おーい、どした?」
と、村田が心配そうに顔を覗き込んできた。
「いや、なんでもない。ただ……、」
錆兎は思わせぶりに間を置くと、物憂げな表情で空を仰ぎながら、悩ましげにこう呟いた。
「恋って、こんなにも人を成長させてくれるんだなって…、」
「なんだよ、いきなり。気持ち悪いな。」
その柄にもない、陶酔しきった姿に村田が気味悪げに突っ込む。
「村田も恋をすれば、わかるぞ?」
「いや、いくつだと思ってんだよ。恋ぐらい、したことあるわ。」
村田はイラッとした顔で突っ込んだ。