第7章 同期達の証言
確かに、命を取り合いともなる鬼退治、それで得られる高揚感は、性的興奮のそれと似たような物がある。そんな柱がいたとしても、おかしくはない。
錆兎自身も、音羽と関係を持つようになった切っ掛けはそれだ。
「でさ、そんな話ししてたらさ、音羽の奴が、真剣な顔で『錆兎もそうなのか?』って、聞いてくるから、アイツも体力おばけだし、性欲は強いんじゃないのかな?って、返したんだよ。」
錆兎は「チッ」と小さく舌打ちをした。まぁ確かに、その言い方だと村田が悪いとは一概に言えない。
「……そうか。じゃアイツが勝手に勘違いしただけか?」
「そうだよっ!」
やっと、理解してもらえた。そう思ったのか、村田の顔が明るくなる。そんな村田に、錆兎のさらに冷たい視線が突き刺さる。
「でもまぁ、お前が誤解を招くような発言をしたのは、事実だよな?……一発で許してやる、歯食いしばれ。」
錆兎が、村田の胸ぐらを掴み上げた。
「さびとぉっ、まてぇっ!!わかり合えるっ!話し合えば、分かり合えるぞっ!」
そう言って身構える村田の、掴んだ胸ぐらを錆兎はパッと離した。
「……冗談だよ。お前には借りもあるしな。今更だけどさ、義勇から聞いたんだよ。お前ら、同期のこと。」
「ん?」
「選別の俺の振る舞いのせいで、お前らが迫害を受けてたって…、」
「あぁ…それか。別に俺がお前に助けられたのは本当だしな。お前がいなかったら、俺は今、ここにいねーし。」
そう言って、陽気に笑う。村田の気遣いが素直に嬉しかった。
しかし、感動している錆兎の横で、村田は予想外の言葉を発した。
「それに、今はそんなこと言ってるやつなんか、もういねーよ?冨岡はもう、あの通り強くなったし、音羽だって、後輩からは慕われてるしよ。」
「だって、音羽は…、アイツは今でもって聞いたぞ?」