第1章 最悪な出会い
「十……、十一…十二……で、………お前で十三だ。」
「十…三?何のことだ!!」
「俺が喰った、鱗滝の弟子の数だよ。アイツの弟子はみんな殺してやるって、決めてるんだ。」
「っ!?」
「それとその面、厄徐の面とか言ったか?その面はな、目印なんだよ。俺は鱗滝が彫った面の木目を覚えている。アイツの付けていた天狗の面と同じ彫り方。」
そこまで言うと鬼は、本当に愉快そうに「グフフフ……」と笑い出した。
「それを付けてるせいで、みんな喰われた。みんな俺の腹の中、鱗滝が殺したようなもんだ、……グフッ…フフフッ…、」
「もう黙れっ!!」
鬼を黙らせるよう、錆兎は力のかぎりに叫んだ。
言葉では言い表せられないほどの怒りが全身を支配していくのを感じ、錆兎は落ち着かせるように深く呼吸を繰り返した。
「……そうか。今まで鱗滝さんの弟子達が帰ってこなかったのは、全てお前のせいか。」
錆兎は柄をグッと強く握りしめ直すと、その切っ先を鬼へと向けた。
身体が小さく震えているのがわかる。
怒りのためか、恐怖のためかはわからない。だが、はっきりしたことが一つだけある。
錆兎はキッと、目の前の鬼を睨みつけた。
「お前だけはどんな理由があろうと、生かしては置けない。この場で、俺が斬る!」
志半ばにこの鬼喰われた兄弟弟子達に罪もない子供達。その仇を取るのは、同じ鱗滝の弟子である自分しかいない。強い決意と共に、錆兎は鬼に向かって走り出した。
「うおぉぉぉーー!!」
それと同時に、鬼から放たれた何本もの腕が錆兎に向かってくる。その腕の一本をかわし、もう一本を斬りつける。
しかしまだ、腕は無数に存在してる。
さらに襲ってくる一本を斬り上げ、足元を狙うよう伸びてきた手を飛んでかわすと、その手を踏み台にして、素早く相手の間合いに入り込む。
「水の呼吸……」
壱ノ型・水面斬り
錆兎の水平に繰り出された刀が、鬼の頸、それを庇うように巻かれた腕ごと横薙ぎに斬りつける。しかし………、
パキーーンっ!
「っ!?」
刀を握る腕に掛かった強い衝撃とともに、小気味いい音を響かせて、刀が根本辺りからぽっきりと折れた。