第1章 最悪な出会い
(なっ…折れたっ!?)
予期し得なかった出来事に、錆兎の目が大きく見開かれる。瞬時に残った刃に目をやれば、刃先は無数の刃こぼれを起こし、ボロボロの状態だった。
(くそっ、しくじったっ!!)
七日間もの間、鬼を斬り続けた錆兎の刀は、もう限界を迎えていたのだ。
シュルっ!!
「ぐはっ!!」
放心した一瞬の隙を突かれ、鬼の大きな手が錆兎の頭を鷲掴みにし、ゆっくりと持ち上げる。同時に潰された面が粉々になって、鬼の足元に散らばった。
「残念だったな。俺の頸は堅いんだよ。まずは頭を潰して、後は手足を引きちぎりながら、美味しく食ってやるよ。」
「うぅ…、くっ!」
鬼の手に力が入り、頭蓋骨がミシミシと音を立ててるのがわかる。身体を暴れさせて、脱出を試みるも、鬼の手はびくともしない。
(この馬鹿力っ……!)
次第に目の前が真っ暗になり、段々と意識が朦朧としてきた。
(くそっ…、駄目だ……もう……、)
遠のいていく意識の中、錆兎の脳裏に二人の人物が浮かび上がった。
一人は赤い天狗のお面を被った師匠と、もう一人、優しい笑顔の黒髪の少年。
………鱗滝さん……また弟子が帰って来なくて、悲しむな。
すみません……、先生。
………義勇は…泣くかな?……アイツは優しくて…泣き虫だから、きっとまた…姉さんの時のように、自分を責めて…そして………
…………義勇、ごめんな。
そして最後に浮かんだのは、自分を守り、鬼に殺された父親の姿だった。
父さん……俺ももう……すぐに…………
覚悟を決めた錆兎は、ゆっくりと瞳を閉じた。
シィィィ…………
(……何か……聞こえ…る……?)
錆兎の耳に微かに聞こえてくる。空気を震わす呼吸音。そして次に……、
雷の呼吸…壱ノ型・霹靂一閃
ドンッ!!
激しく大地を震わす轟音。それとともに、薄く目を開けた錆兎の瞳に眩しく光る稲光。そして次の瞬間、強い衝撃と共に錆兎は地面に投げ出されていた。
「あ…くっ…、」