第7章 同期達の証言
「いや…まさか義勇に、こんな相談する日が来るとは思ってなかった…と、思ってな。」
鬼殺隊の中でも、一二を争うくらいの美形だが、浮いた話しを聞いたことがない。
「寂しい独り身のお前に、こんな的確な助言を貰えるとも思ってなかった。」
「…失礼な。付き合ってる女くらいいる。」
義勇の言葉に、衝撃を受けた表情でその顔を見る。まさか、色恋沙汰に興味がないと思っていた親友がそんなことになってるとは…、
「おい、初耳だぞ!?なんで親友の俺に、何も話してくれないんだ!」
「そういうお前は、音羽との関係を、ずっと俺に隠していたが。」
義勇の言葉に、錆兎が顔が引きつる。
「いや、それは…、関係が関係だっただけに、言い出しづらかったんだ!まさかあんなこと…、潔癖なお前の事だ、軽蔑するだろ?ちゃんと想いの通じ合ってる女だったら、報告したぞ!」
「……確かに、初めて聞いた時は耳を疑った。錆兎に限って、そんなことは…と。」
そう言って、遠い目をした義勇に、錆兎が慌てて言い訳する。
「だって、あの頃って言ったら、そういう事に多感になる時期だろ!?
感情に任せて、その…しちまったけど、責任取ろうにも、向こうはあんな感じで、俺の事を嫌ってた…ように見えたし、俺だって、どうしていいか……、」
いつにもない狼狽えぶりに、義勇は思わず笑い出しそうになる。堪えて小さく微笑むと、こう言った。
「もういい、昔のことだ。」
「義勇、済まなかった。………で、誰と付き合ってるんだ?」
それはそれ、これはこれと、逃さないとばかりに錆兎が義勇に問いかけると、義勇は視線を反らした。
「それは……、ほら、日が昇ってきた。そろそろ、帰るぞ?」
「おい、義勇っ!」
「お前もだいぶ黙ってたからな、俺も暫く秘密にしておく権利はある。」
そう言って、唇に人差し指を当て、軽く微笑んだ義勇を錆兎は睨んだ。
(絶対今度、問いただしてやるからな。)
しかし今は義勇のことよりも、音羽のことだ。早く捕まえて、今までのことを償いたい。
手紙か。そういう遠回しな物は苦手だか、試してみる価値はある。
そんなことを思いながら、錆兎は義勇と二人、森をあとにした。