第7章 同期達の証言
確かに躍起になっていた点は認める。自分に対して、素直になれない音羽に、こちらから裏も表もない純粋な気持ちを伝え続ければ、いつかは答えてくれるんじゃないかと期待していた。
まさかそれが、裏目になってるとは思わなかったが。しかも自分とそんな下世話な噂を立てられていたのなら、音羽が逃げるのも無理はない。
それに、音羽の階級上げを手伝った覚えはないが、身体の関係があったのは事実だ。割り切った関係だったとは言え、今更聞いた錆兎でさえ、耳が痛い。
……音羽…アイツはどんな気持ちで、この野次を聞いていたんだろうか?
この話しが事実なら、俺は長い間、ずっと音羽に負担を掛けてきたことになる。
この事実を今更知って、俺は音羽にどう接してやればいい。きっと素直に謝っても、アイツは強がるだけだ。
両想いになって、舞い上がっていたのは、俺だけだったのか?俺の気持ちを告げたことが、アイツとっては本当は迷惑だったんじゃないのか?とさえ、思えてくる。
こんなに悩むなら、いっそのこと、お互いの気持ちなんて、知らなかったほうが……、
そこまで考え、錆兎は思いっきり、首を振った。
そんな事はない。知った今こそ、周りが何も言えなくなるくらい、俺がアイツを守ってやればいいだけ話しだ。
「……なぁ、義勇。俺は、どうすればいい?」
悔しいが、今は間違いなく自分よりも、義勇のほうが音羽に詳しい。
錆兎の目つきが変わったのがわかったのか、義勇は「遅いぞ?」と言わんばかりに、鼻から息を漏らした。
「音羽はああ見えて、かなり内向的な性格だ。みんなの前で想いを告げるのではなく、手紙でも書いたからどうだ?」
「手紙?」
義勇の提案に、錆兎は目から鱗が落ちたような顔で義勇を見つめた。
「音羽がお前を好いている事は、間違いない。きちんと誠意を伝えれば、無下にはしない。……なんだ、その目は?」