第7章 同期達の証言
思わず言葉にしてしまう。だが、理由はわかっていた。義勇も音羽も、そして村田でさえ、自分に気を使ってくれていたことを。でも、言わずにはいられなかった。
そんな錆兎の問いかけに、義勇は静かに答えた。
「言ったとて、何かが変わるわけじゃない。それに俺たちは、お前には感謝してる。選別で助けられたのは事実だからな。」
「でもっ…、」
それでも、言ってくれていれば、もっと早い段階で、音羽の気持ちをわかってやれたじゃないか。そう言おうとして、口を噤んだ。
そんなの、自分に都合いいだけの話だ。
それに、かなりの衝撃だった。
まさか自分が当たり前のように、良かれと思ってしたことが、こんなにも義勇や村田、そして音羽の鬼殺隊人生に、影響を与える事態になっていたとは……、
「……義勇、お前も…済まなかったな。」
「俺のことはいい。お前には出会った頃から、ずっと助けられている。錆兎のお豆と言われても仕方がないのは、俺だけだ。」
「義勇…お前なぁ。」
錆兎が呆れた表情で親友を見る。
確かに出会った頃はまだ、甘えの抜けない部分があったが、鬼殺隊に入ってから数年、錆兎は義勇が人一倍努力し、力をつけてきた姿を見てきた。
それは自分に万が一があれば、後継として後を任せていいと思えるくらいに。
それなのに、いつまでも自分を下に見て、錆兎を立ててくれる。しかし…、
元来の争いを好まない、優しい性格が邪魔してるせいもあるだろうが、何かきっかけがあれば、義勇は自分以上の柱になるんじゃないか?
そんなことが頭の中に過りながら、義勇を見ていると、反対に義勇は諌めるような表情で錆兎を見た。
「何をぼーっとしている。言っとくが、錆兎。お前にも反省すべき点はあるぞ。」
「…な、なんだよ。」
「お前は、周りの目を気にしなさ過ぎだ。音羽の経緯を知らなかったとは言え、あんなに人目も弁えずに、思いの丈をぶつけてくれば、音羽じゃなくても普通は逃げる。」
「……はい、すいません。」
素直に謝った。