第7章 同期達の証言
「…段々とそっけなくなっていってな。理由を聞こうと、家や蝶屋敷で待ち伏せたり、鴉の情報やアイツと仲のいいカナエにも聞いて、任務先に先回りしたりもしたんだが、完全に裏を掛かれて、結局会えず終いだ。」
そう言って、憂いを帯びた表情で天を仰ぐ錆兎を、義勇は気の毒そうな顔で見つめた。
「そうだったのか。……だが、錆兎。もうそれは止めた方がいい、変質者みたいだ。」
「なんでだよっ!」
思わず盛大に突っ込む。
「俺はこんなにも、音羽の事で頭がいっぱいなんだぞっ!……アイツ、釣った魚には、餌を与えないって奴なのか?通じ合った今でさえ、音羽のことがわからないっ!」
そう言いながら、頭にやった手で宍色の髪を激しく掻きむしる。その姿を、義勇は好奇な眼差しで見つめた。
こんなにも余裕のない錆兎を見るのは初めてで、はっきり言って面白い。
「なぁ、義勇っ!」
錆兎は突然、義勇の肩に手を回して引き寄せると、その耳元で小さく問いかけた。
「…音羽がその気になるような薬とか知らないか?…あっ、…カナエに聞いた方が早いか?この際、血鬼術でも構わないっ!!アイツが俺のことしか考えられなくなるほど、激しく俺のことを求めてくるようなヤツがいいっ!」
「…錆兎、目が座ってるぞ?……それと、もうそれ以上喋るな、音羽が穢れる。」
「だってもう、八方塞がりなんだよ!誰か俺に、アイツの気持ちを教えてくれっ!」
そう叫びながら、義勇の腕を掴んでゆさゆさと揺らす。そんな錆兎に揺らされながら、義勇が呆れた表情を浮かべた。
「錆兎、落ち着け。そんなこと、音羽の性格を考えればわかるだろ?だだ単に、お前の押しが強過ぎるからだ。……それと、」
義勇が真顔で冷たい視線を、錆兎の下半身に落とした。
「お前はそろそろ、それを納めろ。」
義勇に促され、錆兎が目線を下に向けると、隊服の布地を押し上げるように腫れ上がる膨らみが目に入った。
「なっ、違っ!?こ、これは、起きたばかりだからっ!」
錆兎が慌てて、股間を隠すように抑える。それを義勇は冷ややかな眼で見た。