第5章 燃ゆる想ひを※
眠りから目が覚めた錆兎は、隣に寝ているはずの音羽がいなくなってることに気付き、慌てて布団の中を手で探った。
アイツ、また先に帰ったか?
「音羽っ!!」
「な、何よっ!?」
慌てて起き上がり名前を叫ぶと、小屋の隅の鏡台の前で、身なりを整えていた音羽が驚いて錆兎を見る。
音羽の顔を見た途端、錆兎が大きくため息をついた。
「なんでお前、隣にいないんだよ?初めて二人で、床の中で夜を明かしたんだぞ?……起きたら、目を合わせて、恥ずかしそうにはにかみ合う!ここまでが、普通の流れだろ!!」
錆兎の驚くほどの夢見がちな発想に、若干引いた顔で、音羽が錆兎を見た。
「なんだよ、その顔は!?」
「…別に。そんなことより、朝ごはん作ったから、食べなさいよ。」
そう言って、目線を囲炉裏に送ると、錆兎が驚いた顔で、囲炉裏を見た。鉤棒に吊るされた鍋の中から、食欲を誘ういい香りと、何ががグツグツと煮込まれた音がしてる。
「…有り合わせだけど。」
音羽の手作り!?
錆兎は急いで起き上がると、隊服に手を通し、身なりを整え、囲炉裏の前に座った。
差し出された野菜やきのこなどが煮込まれた汁の入ったお椀を受け取り、その中身をじっと見つめる。
音羽の手作り。
心して、ひとくち口に運ぶ。
ごくっ。
う、うまいっ!
……これはもう、俺の嫁、確定だな。
錆兎が感動して、うんうんと頷きながら、そんな妄想に浸っていると、音羽が錆兎を伺うように話しかけて来た。
「……ねぇ、どう?」
そう聞かれ、感動で感想を言うのを忘れてたことを思い出す。
「あぁ、美味い!」
錆兎がそう言って微笑むと、音羽は嬉しそうに顔を綻ばせて「良かった。」と呟いた。
……なんだこれ、幸せか?
そのあまりの可愛さに、錆兎は感動して、こっそりと涙を潤ませた。