第5章 燃ゆる想ひを※
錆兎の顔が、音羽の顔に覆いかぶさるように近づくと、その唇と唇が静かに重なった。
蕩けそうほどに優しく、ゆっくりと唇を食まれ、その心地よさに、音羽の緊張が一気に解かされていく。
「ふっ…、んっ…、」
唇の端から時より漏れる、音羽の不慣れな息遣いを、耳に心地よく感じながら、錆兎はチラッと目を開け、様子を観察した。強く目を閉じて、必死に口づけを受ける音羽の姿が写り、その可愛らしい姿に、錆兎は気持ちが一気に高揚していくのを感じた。
(……はぁ、可愛い。)
堪らずに唇を押し付けると、開いた音羽の唇の隙間から、舌を挿入させた。
「んっ!!」
驚きで身体をビクッとさせる音羽の口内を、舐め回すように舌先を動かす。
(…錆兎の…舌が…、んっ…)
柔らかな舌先で、口内を侵される感触に、脳内さえも侵されていくようで、頭が真っ白になっていく。その初めての体験に身体が強張り、音羽は思わず、錆兎の胸をグッと押し返した。
「っ…、いやっ!!」
その行動に、錆兎が驚きの表情で固まった。
(……また、拒否…された…?)
錆兎の脳裏に、初めての口づけを拒否された苦い記憶が蘇る。
「駄目…だったか?」
「……だって、怖いっ!」
「怖い?別に、乱暴にしてるわけじゃないだろ。俺は出来るだけ、優しく…、」
「それが怖いの。…頭がぼーっとしてきて、おかしくなっちゃいそう。」
そう言って、顔を真っ赤にして手で覆い隠す音羽の姿を見て、錆兎は安心したように微笑んだ。
「俺だって、頭がぼーっとして、おかしくなりそうだ。…でも、それ以上に、お前とこうしてると気持ちがいい。……お前は、気持ちよく…ない…か?」