第5章 燃ゆる想ひを※
押し倒した音羽の上に、四つん這いに覆いかぶさると、錆兎はあともう一つ、二人の間に残ってる暗黙の定め事の謎について、迫った。
「もう一つ、聞いてもいいか?…なんで、必要以上に触るのを嫌がるんだ?……さっきだって、あんな嫌がって…、」
先程の音羽の姿を思い出し、錆兎の胸がチクリと痛む。
「それは…、だってああいう時って、私が一方的に責められて、錆兎はそれを見てるってことでしょ?……そんな姿を見られるなんて、恥ずかしくて…耐えられないもの。」
そういう理由か。真実を知ってしまえば、どれもこれも全部、音羽の恥じらいから来てるもので、その全てがいじらしく感じてくる。
「……それにさっきは、錆兎がいつも違って…怖かったから…、」
「…うぅ…それは、本当に済まなかったと思う。本当に嫌われてるんだって思ったら、苛ついて、焦って、本当に…情けないところ、みせちゃったよな。」
そう言って、錆兎は苦笑いを浮かべた。
確かにあんなに焦って余裕のない錆兎を見るのは、音羽も初めてだった。
今しがた、恥ずかしいところを見せられなくなったと言ったばかりで、それを自分にだけは見せてくれたんだと、少しだけ嬉しくなる。
音羽が嬉しそうに微笑むと、錆兎も微笑みながら、優しく音羽の頭を撫でた。
「でも、もう安心しろ?今度は優しくする。俺が本当に、お前の事が好きなんだって、今からたっぷりとわからせてやるからな。」
そう言って、軽く口づけると優しく音羽を見つめた。
「音羽……好きだ。」
「……っ、」
錆兎に返事を返そうと、口を開き掛けるが、恥ずかしくてまだ言葉が出ない。音羽が戸惑っていると、錆兎が気づいて、その唇を指先でそっとなぞった。
「いい、言わなくて。…恥ずかしいんだろ?……でもいつか、お前から言わせてみせるから、覚悟しとけよ?」
錆兎がニコッと笑うと、音羽は恥ずかしそうに顔を俯かせて、小さく頷いた。