第5章 燃ゆる想ひを※
たまたま包帯など片付けようと、下を向いた錆兎の目に入り、思わず視線を向ける。
(…コイツ、足も綺麗なんだな。)
そういえば、いつも最後まで服を脱がさないから気が付かなかった。
そんなこと思っていたら、錆兎の視線に気づいたのか、音羽がサッと足元を隠した。
「あ…済まない。思わず…、」
(……いや、どんな言い訳しても、ただ、やらしい意味で見てたとしか、思わないよな。実際、見てたし…。)
そう思い、慌てて音羽の表情を垣間見る。
すると音羽は、顔を反らしたままの状態で、小さくつぶやくように言った。
「…もしかして…したいの?」
「いやっ…違うっ!…俺はっ、」
「…だって、……男の人って、そういう事、我慢……出来ないんでしょ?」
「なんだよ、いきなり。」
「特に…柱になるような体力おばけは、性欲もすごいって。だから…そういうお店に通ったり、女を……取っ替え引っ替えしてるって……、」
「誰が、そんなこと言ったんだ。」
「……村田。」
あのヤロー!!後で、ぜってーぶん殴るっ!
「そりゃ、性欲は…否定は…出来ないが、俺は別に、誰でもいいって訳じゃ…、」
誤解を解こうと、必死に言葉を続ける錆兎の話を聞かずに、音羽は背を向けると、こう言った。
「…だから…いいわよ。今日は助けてもらったし…、」
なんだよ…それ。助けてもらったからって…、そんな簡単なことで…、
「待ってくれっ!俺はもう、お前とは…、」
シュル…
静かに音を立てて、音羽の身体を覆っていた布地が、下へと滑り落ちる。綺麗な背中が露わになり、錆兎は思わず息を呑んだ。
白い背中に、艶めかしい曲線。川に落ちたせいか、しっとりと濡れた肌は、囲炉裏の炎に照らされて、キラキラと光を帯びていた。
錆兎の喉がゴクリと音を立てた。
……違う。こんなんじゃない。俺は音羽と、言葉で会話して…分かり合って…、もっと、心から……
……でも、目が離せない。