第1章 最悪な出会い
数年前・最終選別
鬼殺隊士を目指して修行に励んだ子供達が篩に掛けられる試練、最終選別。
多くの鬼が放たれた山の中でただ生き抜くだけの七日間。
錆兎と錆兎の同門で兄弟弟子の冨岡義勇、この二人が選別を受けたその年も多くの子供達が参加していた。
その時から、もうすでに同年代の子供より秀でていた錆兎は七日間の間、多くの鬼を斬り、多くの子供達を助けた。
それが他の人より、少しでも秀でた自分がやらなければならない使命と信じて。
選別も終わりに近づいたある夜、錆兎は怪我をして腕から血を流した子供が鬼と対峙している場面に出くわした。
錆兎にしてみればいつも通りの行動だった。
ただその子供を助ける為に、鬼を斬っただけ。
しかし、今までの子供だったら、喜び、錆兎に感謝してくるのが普通だったのにその子供だけは違った。
「余計な事をするなっ!!」
思っていなかった言葉に錆兎は目を見開いて、その子を見た。その子は錆兎に詰め寄ると、興奮して血走った目で睨みつけた。
「お前なんかに助けられなくても、あんな鬼、自分で倒せた!」
「だけどお前、怪我してるじゃないか!」
「関係ない!……くっ、」
興奮したことにより、傷口に障ったのか、軽く顔を顰めて傷口を抑える子供に錆兎は「大丈夫か?」と近づき、手を伸ばした。
バチンッ!
その手が大きく払い除けられる。その行動には流石の錆兎もイラついた。
「もう勝手にしろっ!」
そう言い捨て、背を向けて歩き出す。
しかし10メートル程行った所で考え直すと、子供の元へ引き換えした。
子供の前に立つと、錆兎は懐から包み紙を出し広げて見せた。
「これは俺の先生が作ってくれた傷薬だ。よく効くから…、」
やっぱりこのまま放っておくことも出来ない。もし痛手を追っていたら鬼どもの餌食になり兼ねない。
錆兎は自分のお節介さに苦笑しながらも手を差し出した。
「ほら、見せてみろ。」
「触るなっ!」
錆兎は嫌がる子供の手を無理やり掴み、袖を捲り上げた。