第5章 燃ゆる想ひを※
「あれは先生のお手製だったが、今回のは残念だけど、俺の手作りだ。
中々先生の所には行けないから、作り方だけ教わって、今は自分で作ってる。でも、他の隊員にも好評だから、効き目は立証済みだ、安心しろ。」
そう明るく笑顔を向ける錆兎から、音羽が視線を反らす。すると、錆兎の腕にも、何かに擦られたような傷跡があるのに、気づいた。
「錆兎も、怪我してるじゃない。」
音羽の言葉に、錆兎が腕の傷に目を向ける。滝に落ちた時、岩か何処かにぶつけた時の物だった。
「これか?もう血は止まってるし、大したことない。お前のが終わったら、ついでにやるから気にするな。」
錆兎は指に薬をすくい取ると、丁寧に傷口に塗り込んだ。音羽の顔が、痛みで歪む。しかし、痛みごときで声をあげるような女じゃない。
錆兎は気にせずに治療を続けた。
治療を続けて暫くすると、音羽が静かに口を開いた。
「……ねぇ、何でいつも、人のことばっかり構うの?私は…自分のことで精一杯なのに、なんで貴方は、そんなに余裕があるのよ。」
「余裕があるように、見えるか?」
問いかけに問いかけで返すと、音羽が何も言わずに頷いた。
「そしたらそれは、俺の努力の賜物だな。音羽…俺はな、すげーカッコつけなんだよ。」
「え?」
音羽が驚きの声を上げると、錆兎を治療続けながら、淡々と言葉を続けた。
「…俺は小さい頃からさ。わりと何でも出来て、気づいたら仲間の先頭に立ってることが多かったんだ。
親父が俺を守って死んで、鬼殺隊に入ろうと思ったときも、……義勇の奴はさ、自分から前に出る性格じゃないだろ?」
錆兎は布地に慣れた手付きで傷薬を塗りつけた。それで音羽の傷口を覆う。
「だからまた、先頭に立つことが増えて……、そうなってくると今度は、情けない所や弱い所を段々と見せられなくなってくるんだ。」
傷口を覆った布地を抑えながら、足元の包帯を手に取ると、器用に腕に巻き付けていく。