第5章 燃ゆる想ひを※
小屋に着くと、錆兎は小屋内にあった身体を覆えそうな薄手の布地を音羽に渡し、濡れた服を脱ぐように促した。
音羽が服を脱いでる最中、錆兎は囲炉裏に火を起こす。
「ほら、濡れた服、寄こせ。」
錆兎は濡れた隊服を受け取ると、火のそばに吊るし、自分も羽織と上の隊服を脱いで吊るした。
そして、持ってきていた手拭いで濡れた髪を拭きながら、囲炉裏の傍に腰を落ち着ける。
その右斜め横に、音羽が座った。
そのまま二人は暫くの間、黙って囲炉裏の炎を見つめていたが、ふと錆兎が音羽の顔をちらっと見た。
(…気不味い。もっと会話して…って、思ってたけど、意識したら何を話していいかわからない。)
やはり音羽の前だと調子が狂う。そんなことを考えながら、また音羽をチラ見する。
すると一瞬だが、音羽が自分の腕を気にかけ、顔を歪めたのがわかった。
「…痛いのか?そう言えば…血が落ちてたな。怪我したのか?」
「…え?うん、でも…ただのかすり傷だし、すぐに呼吸で止血したから……、」
「いいから、見せてみろ。」
強がる音羽に錆兎が近づき、傷を見せるように催促すると、音羽は渋々、掛けていた布地の外に腕を出した。
「結構、深くやられてるじゃないか。あの鬼にやられたのか?」
錆兎が問いかけると、音羽が小さく頷く。
錆兎は自分の荷物に戻り、中から何かの包み紙と布地、包帯を取り出すと、音羽に前に戻ってきた。
隣りに座り、包み紙を広げると、塗り薬が出てきた。
「……それ、選別の時…の、」
音羽が気づいて尋ねると、錆兎も思い出したように頷いた。
「そっか、お前にあげたな。…効いただろ、あれ。」
錆兎が尋ねると、音羽がコクンと小さく頷いた。
確かに、傷口が塞がるまで塗り続けたが、最後の方は傷跡も薄く、目立たなくなるまでに回復したのを覚えている。