第4章 二人きりの任務
音羽は目を開けると、握った刀を回転させ、逆手に持ち替えると、勢いよく鬼の鳩尾に突き刺した。
「ぐあぁぁっ!」
驚いて怯む鬼から、音羽は刀を引き抜くと、反動で横に倒れ込む寸前、錆兎に向かって、刀を投げつけた。
「錆兎っ!!」
「おうっ!」
バシッ!
もう走り出していた錆兎が、その刀を受け取る。
水の呼吸・肆ノ型・打ち潮
その勢いのまま、繰り出した技が、鬼の頸をなぎ払い、吹き飛んだ鬼の頸は、勢いよく地面へと転がった。
崩れ落ちる鬼の頸が、音羽を睨んだ。
「なんで、お前…動けるんだっ!」
「アンタが、私に種を植え付ける前に、べらべらと自分の血鬼術について、喋るからよ。他は部分は間に合わなかったけど、右腕だけは、呼吸で血液の流れを制御して、アンタの血が行き渡るのを防げたの。」
「でも、お前ら、口裏を合わせているようにも見えなかった。俺は操った奴の聴覚も視覚も共有出来る。…お前達はそれらしき言葉は一言も…、」
錆兎が、冷たい視線で鬼を見下ろす。
「俺達には、俺達にしかわからない伝達方法があるんだ。……わかるか?全部、演技だったんだよ。…びびって出てこようとしない、お前を誘き出すためのな。」
錆兎がニヤッと微笑むと、鬼は悔しそうに顔を歪ませた。
「くそっ!!こうなれば、最後に女だけでもっ!」
頸から離れた胴体の手が動くと、突如、崖から伸びた蔓が、音羽の脚を絡め取った。
「きゃっ!」
そのまま勢いよく、崖の方へと引き摺られる。
「音羽!!」
錆兎が慌てて、走り出す。しかし、引きづられていく音羽の身体は、崖の向こう側に消えた。