第4章 二人きりの任務
「宜しくお願いします。それと…そこにある小屋は、鬼退治の間、自由に使ってくださって、構いません。食料やら、少しの備蓄など置いてありますから。」
そう言って、目の前にある小屋を指す。
錆兎たちが了解すると、男はこの場にいるのでさえも、どうやら怖かった様子で、そそくさとその場から、去って行った。
小屋の中に入ると、中は綺麗に掃除され、整頓されていた。
囲炉裏や竈もあり、布団まで完備していて、生活感もあった。もしかしたら、山の管理を任せていたと言う、夫婦の家なのかもしれないと、錆兎は頭の隅で思った。
部屋の隅に荷物を置いて、準備を整えると、横に置いてあった音羽の荷物が目に入る。そこには、例の義勇とお揃いのガラス玉の装飾品が付いていた。
音羽の目の色、薄茶のガラス玉と、もう一つ。
(……まだ村田に渡してないのか?)
錆兎が不思議に思い、首を傾げる。でもこのガラス玉の色は、村田の色じゃない。
軽く青みがかった薄紫色のガラス玉。
(………この色、どっかで。)
「何してるのよ!」
突然、音羽に後ろから声を掛けられ、錆兎はビクッとして、振り向いた。
「早く行かないと、もう日が暮れるわよ!」
「あぁ、済まない。」
錆兎が慌てて、外に出る。それを確認すると、音羽が目の前の山を見渡しながら言った。
「かなり、広いわね。二手に別れましょ?」
そう言って、スタスタと歩き出す音羽の手首を、錆兎が慌てて捕まえた。
「おい、勝手な行動はするなっ!俺が呼ばれた意味がわからないのか?十二鬼月がいるかもしれないんだぞっ!?」
「わかってるわよっ!」
音羽が錆兎の手を振り払った。
「私だって、十二鬼月の下弦くらいなら、もう倒せるわっ!余計な心配はしないで!」
「お前の実力はわかってる。でも、過信はするな。今日は義勇だっていないんだ。おとなしく、俺の傍にいろ!」