第3章 さしも知らじな
錆兎の頭にそんな言葉が過る。そんな仲のいい恋人同士のような事。やはり音羽の、他にもいると予想される相手は義勇ではないかと怪しむように見つめる。
「そういえば、音羽はもう一つ、買ってたな。」
その言葉に、錆兎の身体が反応する。
(なにっ!もう一人、違う男がいるのか!?……それとも、まさか俺に…?)
「村田にやるって、言ってたな。」
(村田かぁ!くそ、俺は…村田以下かっ!)
錆兎ががっくしと項垂れる。
そんな姿の錆兎に気づきもしないで、義勇はその日の出来事の続きを、そのまま淡々と語りだした。
「そのあと、可愛い洋風の甘味処に入ったんだが、アイツ…こんな大きな器に、果物やアイスクリームがたくさん乗った物を頼んで、本当に幸せそうに食べてたな。」
義勇が器の大きさを手で示しながら、説明する姿を見て、錆兎は思った。
(……義勇、もうそれ、普通に逢瀬じゃないか?)
可愛い店の一角に隣同士で座り、楽しそうに甘い物を食べながら、談笑し合う二人が錆兎の脳内を駆け巡る。
錆兎妄想タイム
義「音羽、美味しいか?」
「うん、美味しい♡」
義「ほら、慌てて食べるから、クリーム付いてるぞ?」
義勇の伸ばした指先が音羽の顔に触れ、口元のクリームを拭う。
「義勇、ありがと♡」
とびきりの可愛い笑顔を浮かべる音羽に義勇は優しく微笑み返すと、指先に付いたクリームをペロッと舐め取った。
義「甘いな。」
「あれ?義勇ももしかして、食べたかった?もう仕方ないな、特別に食べてもいいわよ。」
そう言って、音羽が義勇に予備のスプーンを差し出すと、義勇は拒否するように首を振った。
義「いや、俺はお前に食べさせて貰いたい…、」
義勇ゆっくりと肩を抱き寄せて近づくと、音羽のスプーンに乗ったパフェをパクリと食べた。
「ちょっとぉ、それは私の…」
義「やっぱり甘いな。」
そのまま音羽を耳元に唇を寄せると、義勇は小さく囁いた。
義「今夜お前を食べたら、凄く甘そうだ。」
「もうぉ、義勇ったら!……それは夜までのお楽しみでしょ♡」
義「あぁ。でも俺は…もう我慢できそうにない。」
「んぅ…義勇…、こんな所でダメ♡」
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