第14章 擦れ違う心
「……そ、そうなのね。それじゃ仕方がないわ」
反省して俯く義勇に、音羽が元気づけるよう優しく微笑むと、その状況に納得出来ない錆兎から物言いが入った。
「音羽、前々から思ってたが、お前は少し義勇に甘すぎるんじゃないか?俺だったらもっと辛辣に言ってくるだろ!?」
「だって義勇って、たまに放って置けなくなるような目…してくるから……」
そう、それはまるで、捨てられた仔犬のような……
「それは……」
そう言われてみれば、思い当たる節は多々ある。錆兎も子供の頃から、義勇のあの瞳になんだかんだと弱い。昔ある理由から義勇を張り手で殴ってしまった時も、潤む瞳で見つめられ思わず全てを許して微笑み返してしまったことがあった。
錆兎は誤魔化すように、ゴホンッと一つ空咳をした。
「しかしまぁ…なんだ。義勇の言うことも一利あるな。犬に騒がれでもしたら忍び込んだことがばれて、相手も警戒してくるだろう」
「…済まない」
力無く項垂れる義勇を前に、錆兎は腕を組むと「うーん」とさらに考え込む。
「やはり一筋縄ではいかないか。なんかもっと、堂々と正面から入る手立てがあればいいんだが……」
錆兎の言葉に、音羽も考えるように顔を俯かせる。
(堂々と…正面からか。…………ん?……あっ!)
「あるわっ!」
音羽の言葉に、二人の視線が同時に向く。
「昨夜は色んな事が有りすぎて、言うのを忘れていたんだけど……、昨日、清昌くんにこんな物を貰ったの」
懐から1枚の封筒を取り出す。錆兎はそれを受け取ると、表面に書かれた文章を見て驚きの表情を浮かべた。
「お前これ、社交界の招待状じゃないか!」