第13章 潜入捜査・壱
「音羽、今日は会えてよかったよ。……君さえ良ければ、また会いに来てくれるかい?」
その清昌の言葉に、音羽は戸惑った。
自分も久々に懐かしい顔に会えて嬉しかったのは間違いない。出来ればまた会いたい。だって清昌は、姉・静音を覚えていてくれた唯一の存在なのだから。
しかし忘れてはいけない。信じたくはないが、彼は今、鬼殺隊から鬼の関与が疑われている最重要人物で調査対象。
「…うん。機会があればまた来るわ」
当たり障りのない言葉で返すと、清昌は微笑んで懐から一枚の封筒のような物を取り出した。
「なら、君にこれを渡しておくよ」
音羽はそれを受け取ると、そこに書かれた文章を読んで驚いた顔を見せた。
「清昌くん…これって………」
……………
………………
音羽と清昌がこちらに向かってくるのに気づいた錆兎は、急いで義勇に声を掛けた。
「義勇、音羽達が戻って来る。もう行け!」
義勇は頷くと、急いで姿を消した。
義勇の気配が完全に消えると、錆兎は音羽に向かい足早に近寄った。
「音羽!」
その手を取り、心配するようにその顔色を伺う。すると心做しか、陰りのようなものが見てとれた。
「大丈夫か?」
錆兎が心配し問いかけると、音羽は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに笑顔を浮かべた。
しかしその笑顔が何処かぎこちない。
(……アイツに、何か言われたのか?)
錆兎が不審に思い、近づいてくる清昌に軽く牽制するような視線を向けた。だが清昌は反対に、穏やかな笑顔を錆兎に向けてきた。
「錆兎…くんだったかな?音羽を独占してしまって、すまなかったね」
「あ…、いえ…そんなことは……」
どうやら睨んだ理由が、嫉妬から来るものだと思われたらしい。まぁあながち間違ってはいないが……