第13章 潜入捜査・壱
「しかし清昌は、就任してから人前に余り姿を見せていない。その上、子供の頃は身体が弱く、製薬会社の息子に相応しくないと言う理由で、東京の端の片田舎で隠されるように療養生活を送っていたそうだ」
「身体が…弱かった……、片田舎……」
最後の言葉が引っ掛かったように、音羽が小さく呟くと、錆兎が不思議そうに顔を覗き込んで来た。
「どうした?」
その顔があまりに近くて、音羽は顔を赤らめると慌てて首を横に降った。
「ううん、何でもない!義勇、それで?」
「あぁ。だから清昌本人に関する詳しい情報はあまりに少ない。だがもう一つだけ、……清昌は半年前にも妻も病気で亡くしてる」
「そんな短い期間で、身内を3人も…」
「それからだそうだ、清昌がこの屋敷を買い取り、ここに籠もるようになったのは」
二年前に両親を、半年前には最愛の伴侶を、何と言う不運なのだろうか?そう思い音羽が同情に顔を曇らせる。
だってわかり過ぎるくらいわかる。自分も最愛の家族、姉を失っているから。大切な人を亡くした人の気持ちが痛いほどに……
しかし、段々と顔を翳らせていく音羽の横で、錆兎が吐き捨てるように呟いた。
「…わからないだろ。鬼が関与してる疑いがあるんだ。もしかしたら、その死にもソイツが関わっている可能性がある」
「それはっ、……そうかもしれないけど」