第12章 二人だけの…
普段見ない余所行きの笑顔を浮かべ、割って入ってきた錆兎を音羽が訝しげに軽く睨む。すると錆兎が耳元で小さく囁いた。
『こういう時は、俺みたいな良い男の方が効果あるだろ?』
『それ自分で言う?』
まさかの発言に眉を顰める。しかし錆兎は特段気にするそぶりもなくにっこりと微笑み、御婦人方に視線を戻した。
「私たちはとある機関からの要請で、この街で起こっている連続失踪事件について、内々に調べています。何かご存知のことがあればお話を伺いたいのですが、宜しいですか?」
「あら、そうなの?」
「だったら初めから、そう言えばいいのに」
「おばちゃん達の知ってることで良かったら、じゃんじゃん聞いて?」
真摯に振る舞う錆兎の姿がお気に目したのか、完全に心を奪われ、目を♡にする御婦人方は自分達の持ってる情報を提供してくれた。
事の発端は半年ほど前。
この町の外れにある、古い大きな洋館。その洋館をとある資産家が買い取ったことから始まった。
その人物は政界にも多大な影響力を持つ大資産家で、その屋敷を買い取ってからというもの、月に数度、政界のお偉いさんを招いての盛大なパーティを開くようになったと言う。
「それくらいだったら、私達一般市民には縁遠い世界の出来事だったんだけどね……」
一人の御婦人が嘆くように俯く。