第12章 二人だけの…
「ふーん。でも、ここは充分に栄養が回ったみたいだけどな」
錆兎が調子に乗って、後方に回ると背中から手を回して、音羽の大きく育った両果実を両側から鷲掴みした。
パァンっ!!
「往来で、何してるのよっ!!ぶっ飛ばすわよっ!」
大きく振り上げられた手が頬を打ち、錆兎が殴られた頬を抑えながら、頭を下げる。
「すいません」
「もうっ!」
音羽が呆れ顔で錆兎を睨みつけると、錆兎は楽しそうに笑った。
なんか久々のビンタだったが、懐かしさを感じる。そんなことを思って一人でニヤニヤしてると、近くの家の軒先で井戸端会議してる二人のおばちゃんの会話が錆兎と音羽の耳に入ってきた。
「ねぇ、聞いた?あの町外れにあるお屋敷の噂?」
「うん、月に何回か、政界のお偉いさんなんかが集まって、社交界が開かれてるっていうお屋敷?」
「そうそう。でもそれの他に、もう一つ噂があって……」
おばちゃんはさらに声色を小さくする。
「毎回、社交界の当日になると、決まって行方不明者出るって…」
その言葉に、錆兎と音羽の二人が目配せする。
「この前の土曜日も、3軒先のお花ちゃんがね……」
噂話をする二人のおばちゃんに、音羽がいてもたってもいられずに近づく。
「ねぇ、おばちゃん!今の話、詳しく聞かせてっ!」
音羽が問いかけると、井戸端会議をしていたおばちゃん二人は不信感を露わにし、眉を顰めた。
「おばちゃん?……なんなの、アンタ?」
「そうよ、いきなり失礼な子ね。この辺の子じゃないわね?」
口々に捲し立てられ、音羽の顔が引き攣る。その状態に割って入るように、背後から優しく笑みを浮かべた錆兎が声を掛ける。
「失礼しました、ご婦人方」
「あら、いい男」
「ほんと!お兄さん、カッコイイわね。」
二人のおば…御婦人は、錆兎の容姿に好感を持ったらしく、見惚れるように目を細めると、ポッと顔を赤くした。