第12章 二人だけの…
開始直後から、スプーンを掴んだ音羽の手が止まらない。吸い込まれるように口の中に甘味達が押し込まれていく。
「お前…もっとゆっくり…」
「喋りかけないで。溶けてしまったら、アイスに失礼でしょ」
「あ…すいません」
音羽のガチな眼差しに臆して、なぜか謝罪し、静かに珈琲を啜る。
そしてその数分後、錆兎の熱い(引いた)眼差しが見守る中、最後の一口が音羽の口の中に収まった。
すると今まで幸せそうだった顔が一気に曇り、音羽は切なげな瞳で錆兎を見つめた。
「………ねぇ、錆兎?」
「ん、どうした?」
「……………もう一個、食べてもいい?」
「っ!!…同じのをか!?」
「うん!!」
「……す、好きにしろよ」
「ありがとう!」
そして……
「ごちそうさまでした!!」
会計を済ませて、外に出ると、音羽は満足したように笑顔で錆兎にお礼を言った。
結局、音羽は特盛すり鉢パフェを2個平らげ、アイスクリームの乗ったあんみつを4杯、わらび餅を2つ食べきった。
錆兎は頼んだ珈琲を飲みつつ、若干の胸焼けを起こしながらそれを見守ったが、始終音羽が笑顔を浮かべていて、こんなに喜んでくれるなら、別に安い買い物だったなと、納得する。
それに随分と素直に錆兎に笑顔を向けてくれるようになった。数ヶ月前だったら、考えられないことだったからこそ、余計にこの笑顔が尊い。
しかしそれを差し引いてもあの量は流石に常軌を逸してるか?
「お前な。あの量をこの細い身体の何処に入れたんだ?」
錆兎は手を伸ばすと、音羽のお腹をさわさわと撫でる。その行為に音羽が驚いて悲鳴を上げる。
「きゃっ!食べたあとの女子のお腹に触るなんて最低よっ!!」
「いや…、不思議に思って」
「…全集中で消費してるのか、あまり身体には出ないのよ」