第12章 二人だけの…
音羽の要望で訪れた、可愛い洋風の店構えの甘味処に入った二人は、窓側の席に向かい合わせに座った。
「ほら、なんでも好きなもん食えよ?」
定員さんが持ってきたお品書きを音羽に渡しながら、その顔を見ると、音羽はわくわくと期待に満ちた目で錆兎を見つめ返した。
「……好きなもの。ほんとにいいの?」
軽く身を乗り出して、見たことないほど嬉しそうに微笑む音羽に、にっこりと微笑み返すと「うん」と頷いた。
(なんだこれ、やばい可愛い。連れてきて良かった。)
お品書きを見ながら俯くその姿を見ながら、小さくガッツポーズする。
少しすると、食べたい物が決まったのか、音羽が恥ずかしそうにお品書きを見せながら、注文したい商品を指さした。
「こ、これが食べたいんだけど…、」
言われて視線を向けると、そこに書かれていたのは、
【求む、挑戦者!!超特盛すり鉢パフェ♡そのでかさ、富士山級!!】
の文字だった。値段もそれなりのお値段が書かれている。
「……お前、本当にこれを食べるのか?」
錆兎が驚いて問いかけると、音羽は照れ笑いを浮かべながら、コクリと頷いた。
富士山級がどの程度なのか来てみないとわからないが、挑戦者を求めるくらいなのだから、それなりの大きさなのだろう。
義勇から甘いものが好きだとは聞いていたが、これほどとは。驚いたが、音羽が食べたいのなら勿論止める理由はない。
「お前が食べたいなら構わないが、全部食べれるのか?」
「うん。何回か食べてるから大丈夫。」
「そうか。」
食べ慣れているのなら、大丈夫だろう。「分かった、頼めよ。」と錆兎が微笑むと、音羽はぱぁーっと顔を輝かせた。