第11章 恋焦がれて※
「好きなんだろ、そういうの?」
「な、何でそんな事、知ってるのよ。」
「義勇に聞いた。義勇は知ってるのに俺が知らないなんて、不公平だろ?」
不公平?別に義勇と比べることじゃなくない?そう言いかけ、音羽は口を噤んだ。
(もしかして…これって、義勇にヤキモチ妬いてるって…こと?)
そう思うと、途端に音羽の身体が熱を持ったように熱くなる。音羽は錆兎から視線を反らすと、小さい声答えた。
「で、でも、そんなもの見たって、面白くないわよ?……得に甘い物食べてる時なんて、きっと引くわ。私、すごい食べるから。」
「そんなことで引いたりしない。俺はもっと、俺の知らないお前を知りたいんだ。……駄目か?」
「別に…駄目じゃないけど…、」
戸惑い気味にそう答えると、錆兎の顔に笑顔が浮かぶ。
「そうか!じゃ、今度は何処か外に出かけような。……ほら、約束。」
錆兎が小指を音羽の前に差し出す。
(えっ?指切り!?)
まさかこの年で指切りをさせられると思わなくて、なんだか恥ずかしいけど、でも擽ったいような胸の奥がほっこりと暖かいような、そんな気持ちになる。
遠慮がちに小指を絡ませると、錆兎は嬉しそうに顔を綻ばせて、その指を切った。その顔がまるで幼い少年のように無邪気で可愛くて、音羽は自分の胸がドキドキと高鳴っていくのを感じた。
(…可愛い。こんな顔の錆兎、初めて見る。……私も、私の知らない錆兎を、もっと知りたい。)
急に愛しいと思う気持ちが、グッと溢れ出し、音羽は無意識のうちに、錆兎に向かって手を伸ばしていた。
その指先が顔に触れ、掌が包み込むように頬に触れると、錆兎が驚いたように軽く目を見開いた。