第11章 恋焦がれて※
錆兎は音羽を抱きしめたまま反転すると、優しく布団に寝かせた。その上に覆いかぶさるように馬乗りになり、そのまま音羽を見下ろすと、音羽の顔がポッと熱を持ったように赤くなる。
「心の準備は出来たのか?」
「……出来て…ないです。」
ポツリと答えると、錆兎がクスリと笑う。
「全然、滅却出来てないじゃないか。」
でも、もう流石に待ってはやれない。それに、音羽の準備が整うのを待っていたら、一生お預け状態になるだろう。
錆兎は言及するのはやめて、音羽の寝間着の帯を手に取った。その時に初めて、音羽の姿をちゃんと見て、気づいた。
「そういえば、隊服以外の姿、見るのは初めてだ。」
「そ、そう?……でもこれ、寝間着の浴衣よ?」
「それでも、なんかいいな。なぁ、普段は…任務がない時とか、どんな格好をしてるんだ?」
錆兎が疑問に思い、問いかけると、音羽は何でそんなこと気にするんだろうかと思いながら、答えた。
「普段…、普通の服装よ?…袴とか、着物とかが多いかしら。」
「そういうの着て、誰かと出掛けたりするのか?」
「そりゃ、出掛けることもあるけど。普段は蝶屋敷の皆とか、カナエちゃんとか、後…義勇とも、出掛けるかな?」
「義勇?」
音羽の言葉に、錆兎の顔が少しだけムッとする。
「義勇とも出掛けるのか?……じゃあ義勇は、お前のそんな姿も見たことあるってことか?」
「うん、そうなるけど…、」
音羽の答えに、錆兎が黙り込む。
「……どうしたの?」
急に黙り込んだ錆兎の顔を、音羽の軽く身を起こすと、不思議そうな顔で覗き込んだ。
「………俺も、見たい。」
「何よ、いきなり…、」
「俺もそんな姿のお前と、街に出掛けたい。雑貨屋で可愛い小物選んでるお前や、甘味処で幸せそうに甘い物を食べてるお前も見てみたい。」
少し拗ねた子供のような顔で、錆兎は音羽を見つめた。