第11章 恋焦がれて※
だが今ここで、自分が音羽を茶化すような発言をすれば、音羽は照れてまた消極的になってしまうかもしれない。
錆兎は何も言わないまま、音羽の手の上に自分の手を重ねて握りしめると、その手に愛おしそうに擦り寄り、優しく口づけた。
そのまま熱い視線を音羽に向け、覆いかぶさるように顔を近づけると、ゆっくりと唇を重ねる。
今日、何度したかわからない口づけ。だが、けして飽きることはない。それどころか、触れる度に気持ちが溢れ出し、もっと、ずっと繋がっていたくなる。
錆兎は、何度も何度も触れるだけの口づけを繰り返し、ゆっくりと唇を離すと、額を突き合わせた格好のまま、小さく囁いた。
「……音羽、愛してる。」
「っ、」
その瞬間、音羽の身体が小さく震えた。
(私も…伝えなきゃ……、錆兎に…愛してるって………………………、)
しかし、突いて出てくるのは沈黙。また口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこない。
なんでこんな時に限って、自分は勇気が出ないんだろう。
音羽は自分の不甲斐なさに呆れて唇を噛みしめると、両手を錆兎の首に回して抱きついた。
伝えられない悔しさを伝えるように、抱きしめた腕にギュッと力を込める。すると、錆兎の顔が嬉しそうに綻んだ。
(……凄いな。言葉なんか無くても、こんなにも音羽の気持ちが伝わってくる。)
錆兎は音羽の背中に腕を回すと、答えるようにその身体をギュッと抱きしめ、引き寄せた。その瞬間、音羽の温もりと匂い、柔らかさが直に感じられ、錆兎の身体が否応無しに反応した。
「そんなに必死に抱きついてきて、もうどうなっても知らないぞ?」