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【鬼滅の刃】水鏡之人【錆兎】

第10章 素直への第一歩





そのままギュッと抱きしめると、音羽が軽く錆兎の胸を叩いた。

「何よ!これでも…精一杯っ、」

「上等、今はそれで充分だよ。」

今はこれが精一杯でも、大事な一歩。これから二人で少しずつ歩んでいけばいい。



「ほら、こっち見ろ?」

そのまま胸で縮こまってしまった音羽の頭の上から声をかけると、反射的に上を向く。その顔に錆兎の顔が近づいた。咄嗟に目を閉じると、音羽の唇に錆兎の唇が重なった。

「んっ…、」

そのまま角度を変えながら、何度も吸い付くように唇を喰んでいく。音羽も必死に答えようと、その動きに合わせる。



やがて、唇の隙間から入った舌先が絡まり合うと、もう止められなかった。

そのまま音羽を優しく抱きしめたまま、床に押し倒す。

「きゃっ!」

驚いた音羽が、反射的に錆兎の身体を手で押し返した。

「ちょ、ちょっと待って、錆兎っ!私…今日はそんな……、」

なんせ、フラれると思って来たから、何の準備も…心の準備でさえしてきてない。

「……駄目…か?」

錆兎が押し返した手を握り、切なげに聞き返す。その瞳に音羽の胸がきゅんと音を立てた。

「いや…、だ、駄目じゃ…ないけど……、私…任務帰りで、お風呂に昨日から入ってない……から…、」

「別に気にしないが…、」

「だ、駄目よ!私が気になるのつ!それに…こんなとこで…、」

そう言われて、錆兎が辺りを見回す。

するとそこは居間で、横を向けば無機質に置かれたちゃぶ台、音羽を押し倒したのは座布団の上だった事に気がついた。

「あぁ…まぁ…、そうだな。」

これじゃ余りにも余裕がなく、がっつき過ぎてると思われても仕方がない。錆兎は軽く息を吐きだし、速る下半身を抑え込むと、余裕のある笑みを浮かべた。

「なら、入ってこいよ。今、準備してやるから。」

そう言って、錆兎は立ち上がった。








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