第9章 水際の攻防
最後の方はしんみりと、同情を含むように声が揺れていて、隣で静かに反省していた音羽も、とうとう耐えきれずに、「ブッ!」と吹き出した。
「お、音柱っ、…ッ…、これ以上…鬼を…刺激しないで…くだっ、フフッ……、アハッ、アハハッ!!」
ツボに入ったのか、腹を抱えて笑う音羽を見て、鬼の顔が真っ赤に染まった。
「ちくしょー、どいつもこいつも馬鹿にしやがって、お前ら全員、地獄に送ってやるっ!」
怒り狂ったかのように叫ぶ河童鬼。その姿を見て、天元が隣にいる音羽に問いかけた。
「おい、音羽。アイツ、なんで怒ってんだ?自分でハゲだって、告白したんじゃねーか!しかも俺は同じ男として、同情までしてやったんだぞ?」
「知りません、そんなことっ!ていうか、もうハゲとか言わないでください、また…込み上げて……、」
笑いを耐えるように表情筋をピクつかせる音羽の眼の前で、河童鬼が徐ろに片手を大きく上げた。
ドンッ!
大きな爆発音と共に、激しく水流を巻き上げながら、池の中に何本もの巨大な水柱が立ち上がった。
「池の水がっ!?」
驚きの余り、声を上げる音羽と一般隊士達。だが、天元だけはピューっと嬉しそうに口笛を吹いた。
「なんだよ、アイツ。地味な見た目のくせに、なかなかド派手な血鬼術を使うじゃねーか?気に入ったぜっ!」
「え、見た目地味ですか?違う意味で、ド派手に印象深いんですけど、……って、何を感心してるんですか!ほらっ、来ますよっ!!」
水柱が生き物のように大きく撓ったかと思うと、音羽達目掛けて襲いかかってきた。
天元と音羽が同時に別々の方向に飛んで、水の攻撃を回避する。
すると水は地面に打つかる直前二つに別れ、天元と音羽の両方を追いかけてきた。
「何、この水っ!」
音羽が追いかけてくる水の猛追を交わしながら、大通りを駆け抜ける。