第8章 音柱の任務と蝶屋敷の女主人
流石は柱、洞察力が鋭い。まるで見てきたかのように言ってくる。
確かに言う通り、自分のその動きは錆兎と同じ任務に着くようになってから、身に付いた物だ。
先へ先へと誰よりも率先して走ってしまう錆兎が、動きやすいようにけして足手まといにならないようにと、常に考えて行動するようになった結果だ。
(それが私の強みになるなんて、皮肉よね。)
音羽が軽くに苦笑いを浮かべる。
「んな顔すんな。他の柱連中だって、随分とお前を評価してんだぞ?仕事がし易いってよ。」
「え?…本当ですか?」
音羽の顔が嬉しさに緩む。
それも錆兎のお陰かもしれない感は否めないが、それでも評価されたことは素直に嬉しかった。
自然とこぼれ出た笑顔に、天元が驚いた顔を見せた。
「お前、意外と色んな顔すんじゃねーか。そうやって笑ってる方が可愛いぜ?」
「か、可愛いっ…ですか?」
天元の言葉に顔を赤らめて俯く。その姿を見て天元は『なるほどなぁ』と心の中で呟いた。
きっと錆兎の奴は、音羽の普段の姿と今のような姿、その差に落ちたんだな。と納得したように頷いた。しかし…、
「この様子なら、思ってたほどじゃなさそうだな。反応が薄いって聞いてたから、心配してたんだぜ?」
「え?……はんのうが…うすい?」
音羽が小さく首を傾げると、天元がハッとして口元に手を当てた。
「あっ……やばっ…、」
そのまま焦ったように視線を反らす。
「宇髄さん、どうしたんですか?」
「…いや、なんでもねえ!それより、さっきの話し途中だろ?それで、何で錆兎の奴を避けてんだよ?」
なんか上手くはぐらかされたような気もするが、こっちもその話しははぐらかしたい。
「だから、宇髄さんには関係ないって言ったじゃないですか。…ほらっ、お蕎麦来ましたよ。」
ちょうどよく席に届いた蕎麦に視線を移し、話題を終わらせた。
今は一旦、錆兎のことは忘れていたい。
夜には任務だってある。今、優先すべきは仕事の方だ。
そう思いながら、音羽は箸を手に取ると、海老天蕎麦をじーっと見つめた。
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