第8章 音柱の任務と蝶屋敷の女主人
「まぁな。忍びやってた頃は、自分が一番最強だと信じて疑わなかったからな。だが、そんなちっぽけな自尊心なんて、ココに来てソッコーで打ち砕かれたわ。」
まさか天元ほどの男が、他の柱に対して、自分と同じ様な劣等感抱いていたとは。雲の上の人だと思っていたのに、親近感が湧いてくる。
「宇髄さんはどうやって、その状況を乗り越えたんですか?」
「俺か?俺は……、まぁ世の中に俺よりも凄いバケモンがいようがいまいが、俺がその他一般の奴らよりは優秀なのは変わらねーからなぁ。気にしないことにした。」
その瞬間、音羽の顔がスッと真顔に戻った。
「…………そう…ですよね。」
やっぱり、柱になるような人外の魔物と自分を、同じ基準で考えた事が浅はかだったと音羽は反省した。
「でもそんな悲観的でもねーなら安心したわ。お前にはお前の良さがあるんだからよ、そこは自信持って行けよ。」
「そうですか?…じゃあ、反対に聞きますけど、私の良いところってなんですか?」
音羽の問いかけに、天元は「うーん」と顎に手をやって考えた。
「……顔?後は……顔と……、顔?」
音羽が恨みがましい目で、天元を睨む。
「冗談だよ。お前は仕事はきっちりとこなすし、鬼殺隊の一員として充分にその役割を果たしてる。お前に憧れたり、尊敬してくれる隊員だって、山程いんだろ?」
「山程は…いないですけど。」
でも確かに、雑魚は雑魚なりに努力してきた甲斐があったのか、今では慕ってると言ってくれる若い鬼殺隊員も有り難い事に増えてきた。
「それに補佐的な動きは得意だろ?
……まぁそれも、入隊からあんなバケモンの傍にいて、奴が動きやすいようにって動いてるうちに、自然と身についたんだろうけどな。」