第1章 最悪な出会い
転がった数メートル先で錆兎が苦痛に歪めた顔を上げると、目の前に人影が見えた。
「お…まえ、さっきの……、」
「おい、しっかりしろ!動けるか?」
それは先程助けた、感じの悪い子供だった。
「なんで…ここに……、」
「それは…お前を追って……、いやそんなことはどうでもいいっ!早くここから逃げるぞ!」
子供の手が錆兎に向かって伸びる。しかし、すぐに鬼の攻撃が二人に向かってきた。
「危ないっ!」
錆兎が咄嗟に子供に飛びつき、鬼の手から逃れる。抱き合うように転がったのち、錆兎はすぐに身体を起こすと子供に怒鳴りつけた。
「敵に背を向けるやつがあるかっ!」
「お前を連れて、すぐに逃げようと思ったんだよっ!」
「だからって、隙を見せるなっ!お前そんなだから鬼の攻撃なんて喰らうんだよ!」
「なんだとっ、お前だってたった今捕まってたじゃないかっ!」
「それは刀がっ…、そんなことより今はアイツを…お前の刀っ……、」
そう錆兎が言いかけた時だった。
ズズズズ………
「っ!?」
子供の耳に微かに聞こえる地鳴りのような音。
次の瞬間、子供は両手を突き出すと、錆兎の身体を思いっきり突き飛ばした。
「うぁっ!…お前…なにしてっ……、」
子供に突然突き飛ばされた錆兎が振り向くと、その刹那、地面から現れた無数の手が子供の身体を鷲掴みした。
「うあぁぁっ!!」
錆兎の手が、子供の手を掴もうと伸びる。しかしそれよりも早く、子供の身体は鬼の本体へと引っ張られていく。
「くそっ!」
鬼は子供の細い身体をその腕ごと二つの手で両側から鷲掴みにすると、錆兎に見せつけるように正面に向けて、自分の顔の高さまで持ち上げた。
「このガキ、邪魔しやがって。俺は狐の小僧を狙ったんだぞ?……まぁいい、お前から捻り潰して、喰ってやる。」
鬼の手が、ぎゅうぎゅうと子供の身体を締め付ける。
「ぐはっ!」