第8章 音柱の任務と蝶屋敷の女主人
「本当は言ったら怒られちゃうんだけど…、特別よ?浅草の方で、任務って言ってたわ。素敵な殿方と合同任務みたい。」
「…と…殿方?」
錆兎の顔が引き攣る。
「ええ。鬼殺隊でも、一二を争う色男さんよ。」
鬼殺隊でも一二を争う…と聞いて、一番最初に浮かんだのは親友の姿だったが、義勇の次の任務は浅草じゃなかった。
音羽もそれなりの階級には着いてる。合同任務となれば、同等かそれ以上の人物。
そして、あの界隈が担当と言えば……、
「……宇髄か?」
「ふふ♪」
カナエが嬉しそうに微笑んだ。
答えを当てて、一度は安堵する。チャラついた派手な格好はしているが、天元は奥方様達一筋だ。
しかし…と、錆兎の頭にまた違う問題が浮かび上がる。
(……不味いな。前に一度だけ、酔いに任せて、宇髄に音羽の事を相談しちまった。)
行為中に善がらない、反応の薄い、つまらない女をどうにかして、自分に夢中にさせる手立てはないかと。
名前を明かした訳じゃないが、村田の話だと錆兎と音羽の仲はもう鬼殺隊公認だ。相談した相手が、音羽であることに宇髄が気付かないわけがない。
「……どうしたの、錆兎くん?顔が真っ青よ?」
「……いや、なんでもない。」
何で避けられているのか、皆目検討もつかない状態で、これ以上心証を下げたくはない。
(宇髄、頼むっ!絶対に、余計なことは言わないでくれっ!!)
そう頭を抱えながら、段々と項垂れていく錆兎を、カナエは楽しげに見つめた。
(鬼殺隊の男の子って、根が真面目だから、からかうと面白いのよね♪つい、遊んじゃうわ♡)
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