第8章 音柱の任務と蝶屋敷の女主人
「じゃあ、なにかしら?…あっ!もしかして、音羽を長い間、蹂躪し続けたことで怒ってた件かしら?それならもう、怒ってないわよ?」
カナエは錆兎に、ニコッといつもの優しい笑顔を向けた。その笑顔が余りに自然すぎて、反対に怖い。
音羽と恋仲になったことを報告した際、どうやら、ずっと前から二人の関係を知っていたらしいカナエは、錆兎のはっきりしない態度に不満を持っていたらしく、チクリチクリと嫌味を言われた。
そのことを言ってるのだろう。錆兎はカナエの言葉に顔を引き攣らせると、口をモゴモゴとさせ、言葉を返した。
「……いや、その言い方は…語弊が…、」
「あら?……私、間違ってたかしら?うら若き十代の、純粋な乙女の純潔を奪って置いて、長い間、責任も取らずに蹂躪し続けたのよね?」
威圧さえ感じるその笑顔を直視できずに、錆兎は軽く目線を下げると、觀念したように頭を下げた。
「…あ…はい。すみません、間違ってないです。」
「でしょ?」
恐らくは、カナエに口で勝つことは一生出来ない。タジタジになる錆兎を見て、カナエはプッと小さく吹き出した。
「ふふ、冗談よ。いつかは言ってやろうと思ってたから、つい言い過ぎちゃうの、ごめんね?」
「お前、いつから知ってたんだよ、俺達の事。」
錆兎の問いかけに、カナエは少し考えるとこう答えた。
「うーん。いつからって、最初から知ってたわよ?あれは…、いつだったかしら?貴方達が関係を持った数日後くらいかな。…真っ赤な顔をして、音羽がここに飛び込んで来たのよ。」
「アイツ、そんな前から……、」
「あら、ここに来てくれて正解よ?男の子は快楽に任せて、ただ出すだけだろうけど、女の子はそれだけじゃないんだから。」
カナエがいつにない、厳しい視線を向ける。