第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
兼続「それで?さっきから手に抱えているのはなんだ?」
忘れていたのか手に持っているモノを指摘され、舞の顔がぱぁっと輝いた。
兼続「?」
「見てください!兼続さん。雷蔵のお友達を連れてきました!」
舞が箱を開けるとそこには、雷蔵よりも小さい子供のハムスターが二匹入っていた。
「繁殖すると大変なのでどちらも男の子なんですけど、この子がゴールデンハムスターで、この子がロボロフスキーです。可愛いでしょ?ふふ」
ちんまりと座っているハムスターを指でつつきながら『明日一緒におうちを作りませんか?』と無邪気に笑う。
兼続「はぁ……仕方がない。つきあってやる」
行灯の淡い光に隠されていたが、兼続の目元は色づいている。
「ハムスターの餌も買ってきたんですよ。これがあれば便利って……んん?」
ここまできてようやく謙信の存在に気が付いて舞が口を開けて驚いた。
「謙信様っ!!いらっしゃったとは気づかず、申し訳ありません!!!
決して無視していたわけではないですよ?」
申し訳なさそうに謝る舞に謙信は手を伸ばした。
謙信「平和な世に居れば良かったものを…お前の意志で戻ってきたのか?」
背負っている荷物やハムスターに目をやり、気遣うように髪を梳いた。
「もちろんです!こちらに戻りたくて仕方がなくて毎日泣いていたくらいです」
泣いていたという言葉に、二人が眉を寄せた。
「でも泣いていても仕方がないと、いつワームホールが開いても良いように準備をしていたんです。
皆に再会できた時のためにいっぱいお土産を用意して、洋服もお洒落なのを着て…」
兼続が身体をずらし、舞の着ている物を確かめた。
兼続「……変わった装いだな」
微妙な評価に舞は口を尖らせた。
「これが202●年の流行です!」
謙信「舞……いつまでも兼続に抱かれていないで、こっちに来てよく見せてみろ」
謙信が優しく誘い、腕を広げると舞が嬉しそうに身を乗り出した。
ぎゅっ
「兼続さん?」
不思議そうに舞が振り返った。その頬が赤くなっている。