第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
舞が姿を消して〇日………
謙信「これほど探しても見つからないということは、やはり舞は500年先の世へ帰ってしまったのだろうな…」
夜遅くまで仕事をしていた謙信が筆をおいた。
兼続「そうですね……」
小さいため息が二つ、空(くう)に消えた。
その時頭上がぱっと明るくなり、二人は身構えた。
謙信「何事っ!?」
兼続「謙信様、おさがりください!」
天井付近に浮いている明るい光はキラキラと星のように明滅している。
行灯の光よりも強い輝きに、謙信と兼続は目がくらまないよう目を細めて注視した。
やがてその光の中央に人型の影が現れ、ぼんやりとした輪郭は次第にハッキリしてきた。
謙信「まさか……」
兼続「舞なのか?」
兼続が光の真下に移動すると突然光は消えうせ、人型の影は落下した。
ドサッ
「きゃあっ!?」
受け止めた衝撃で兼続は畳に尻もちをついた。
「あれ、痛くない……わわ?兼続さん!すみません!」
兼続の上から慌ててどこうとしているのは、現代の服を着た舞だった。
重たい荷物を背負い、手に何か持っているせいで、動きずらそうにもがいている。
兼続は確かめるように身体に腕を回した。
消えて無くなる幻ではないと、密かに息を吐いた。
兼続「皆に心配ををかけてどこに行っていた?」
「そ、それがお城の布団で寝ていたはずなんですが、起きたら500年後の私の部屋で寝ていたんです……」
兼続「何故直ぐに帰ってこなかった?」
ぎりっと兼続が歯噛みする音がして、舞は小さくなった。
「佐助君が居ないからワームホールが開く場所や時間がわからなかったんです。
それに私はあちらでは行方不明扱いになっていて、家族に今までどこへ行っていたのか質問攻めにされたり、警察で調書をとられたり……色々大変だったんです」
身体を縮めている姿は肉食獣に睨まれた小動物のようだ。