第31章 耳掃除をしよう(春日山勢)
逡巡していると……
謙信「佐助っ!!」
「!?」
ばー――――ん!!と襖が外れそうな音がして謙信様が現れた。
そうしていい雰囲気になっている(ように見える)私達を見て、スラリと刀をひき抜いた。
謙信「舞に不埒なまねをするとは良い度胸だな、佐助」
(ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
やっぱりパワハラ上司だったっ!?)
佐助君はいつの間にか眼鏡をかけていて迎撃体勢だ。
さすが慣れてるっと感心している場合じゃなかった。一気に詰め寄った謙信様が刀を振り下ろした。
(わっ、いきなり斬りつけてきた!?)
キーーーーーン!
耳につんざくような金属音が響き、あまりに本物すぎる音に眩暈がした。
謙信「佐助のからくり部屋は舞には死地となろう。
そんな危険な部屋に案内したばかりか苦無を見せるだと?
女にそのような物騒な物を見せつけてどうするつもりだっ!!」
(目の前で繰り広げられている光景のほうが物騒なんですけど!)
しかもリスのクナイを武器の苦無だと勘違いしてるし……
「ん?もしかして書き置きに漢字で苦無って書いたから?」
私の落ち度で佐助君がピンチに陥っている。
止めたいけれど二人は目にも止まらない速さで攻防して、そのうち……
バン!!もくもくもく……
「っ、煙玉っ!?う、げほっ、げほっ!!
目がっ、目にしみる~~ハ、ハッ、ハックショー――――ン!」
体験したのは煙玉の実験じゃなく実践だった。
さすが佐助君が研究開発しただけあって煙がただものじゃなかった。ものすごく目に染みて涙が止まらない。鼻もムズムズする。
(う、すごい。これ何が入ってんの!?)
佐助「ごめん、舞さん。後遺症が出るようなものは入れていないから安心して。
それじゃまた後で」
謙信「待てっ、佐助!!」
真っ白な煙が無くなったころには二人とも姿は見えず、信じられないくらい遠くで金属音がしていた。
「えっと……」
呆然としていると静かな足音が聞こえて、姿を現したのは………