第31章 耳掃除をしよう(春日山勢)
「!」
信玄「……ふっ」
(む、胸がっっ、私のこの貧相な胸がっ…、
信玄様の顔に当たってるっ!!!)
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!
す、すみませぇぇぇぇー―――――ん!!!!」
男の人に胸を押し付けるなんて馬鹿じゃないの!?と恥ずかしさも相まっての大絶叫になった。
そうしたら庭の方を向いていた三人が弾かれたようにこちらを振り返り、その反射神経の良さと言ったら、称賛を贈りたくなる速さだった。
佐助「っ、どうしたの舞さんっ!?」
幸村「信玄様っ!ったく、あんたって人は見境がないなっ!!」
兼続「………?どうせ舞が何かやらかしたんじゃないのか」
佐助君は煙玉か手裏剣でも手にしているのか懐に手を差し込んでいるし、幸村は既に部屋に足を踏み入れ、兼続さんだけが落ち着いて座ったままだった。
(幸村、佐助君、心配してくれたのにごめん…!
そして兼続さん、鋭いっ!)
「ごめんなさい、ちょっと事件がありまして…。
信玄様は何も悪くないです……ごめんなさい。
本当、ただの事故っていうか、とりあえず3人とも元の位置にお戻りください…」
佐助君と幸村は怪訝そうにしていたけどまた廊下に戻っていった。
3人の後ろ姿を見てほっとしていると、膝の上で信玄様が未だにクスクスと肩を震わせていた。
信玄「あんなに驚かせるつもりはなかったんだ、姫は初心だな」
「い、いえ、なんというか……お、お粗末様でした…っ」
信玄「ははっ!そんなに謙遜することはないよ。
充分良い香りで柔らかかった…」
「いや、もう…なんといったらいいのか、むぅぅぅ…」
変な唸り方をしたら廊下に居る幸村が『カエルがつぶれたような声がしなかったか?』とキョロキョロしている。失礼すぎる。