第31章 耳掃除をしよう(春日山勢)
来たというか来させられたに近いけど、そこは丸く収まるように言い換えた。
手の震えもお城に着いた頃に比べれば落ち着いたから、なんとかできそうだ。
今なら一番乗りですよと、親指と人差し指で耳かきをクルクル回してみせると、謙信様はのってくれた。
謙信「ふむ。他の男に先を越されるのは好かん。
手始めにしてもらうとしよう」
さっきまでの機嫌の悪さはどこへ行ったのか意気揚々としている。
(意外と単純な方だな…)
変わり身の早さに目を白黒させていると、信玄様は『謙信の扱い方をわかってるじゃないか』というように口元を綻ばせていた。