第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
佐助「いつも通りの様子で、これから家出や失踪をしようとしているようには見えませんでした。
部屋を見ましたが、荷物はそっくりそのまま残されています。
なくなっているものがあるとすればせいぜい手ぬぐい1枚というところです」
佐助は『それに…』と内心で思っていた。
(舞さんは誰かに片思い中だった。家出なんか…するはずがない)
姿を消す数日前、熱烈な恋ばなに付き合った佐助には確信があった。
信玄「佐助。『あっち』の可能性はないのか?」
大勢の人間が集まっている場所でワームホールの話をするのは憚(はばか)れる。
信玄は言葉を選び佐助にたずねた。
事情を知っている謙信達の視線がさっと佐助に寄せられる。
佐助「1週間前に調べた時はしばらく発生しないという結果でした。
ですが突発的に発生した可能性もあるので、これから調べるところです」
兼続「結果はいつ頃出る?」
佐助「戌の刻には出せます。正確なデータを出すには、今夜の星の観測が必要なので、そこから計算したとすると、そのくらいの時間になります」
兼続「わかった。謙信様、『あっち』の可能性が濃厚になるまでは近隣諸国にも人をやり、捜索させたいと思いますが構わないでしょうか」
謙信「許す。信玄、三つ者にも探らせろ」
信玄「もうやってるよ。俺だって姫が心配なんだ」
早朝の集まりは一旦お開きになり、城の誰もが舞を心配し、持ち場に戻っていった。