第4章 姫がいなくなった(兼続さん)
花散らしの雨が降る、とある日の早朝。
春日山の大広間には早朝とは思えない人数の男達が集まっていた。
広間に入れない女達も廊下に集まり、心配顔で中の話を伺っている。
謙信「舞が城の中に居ないというのは確かなんだな?」
兼続「はい。皆で協力して捜索にあたりましたが見つかりませんでした。
軒猿達に天井裏や縁の下も探すよう命じましたが、そこにも姿はなく……」
抑揚のない声が、フツリと途切れた。
謙信が視線をやると兼続の怜悧(れいり)な横顔に憂いが滲んでいる。
謙信「どうした」
兼続「…いいえ。申し訳ありません。今は城下に向かわせた連中の報告を待っているところです」
佐助「昨夜舞さんは、俺の部屋で幸村も一緒にビンゴゲームをしていたんです。
それが終わって部屋まで送ったのが…大体戌の刻(21時)を過ぎた頃だったと思います」
幸村「特に変わった様子はなかったよな?」
佐助が無表情で頷いた。
広間に集まっていた者達は『びんごげーむ?』と疑問を浮かべている。