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☆姫の想い、彼の心☆ <イケメン戦国>

第4章 姫がいなくなった(兼続さん)


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――

兼続「謙信様、お茶をお持ちしました」

謙信「ああ」


朝の騒ぎのせいで、朝餉もとらずに執務をしていた謙信のところに、兼続が茶を運んできた。

その場に居た幸村がぎょっとしている。


幸村「あれ…お茶じゃなくて、信玄様の饅頭じゃねえか」


饅頭に押されている焼き印は信玄御用達の店のものだ。
義元がくすりと笑った。

佐助は自室でワームホールの発生日時を確かめる作業に入っている。


義元「いいから……黙って見ていてごらん」


二人が静かに見守る中、謙信は難しい顔をしたまま饅頭を手に取り、口に運んだ。

いつもなら絶対口にしない饅頭を無表情のまま咀嚼し飲み込んだ。
そのまま何も言わずに、黙々と仕事を続けている。

幸村が信じられないものを見るように、二人を凝視している。


幸村「いつもなら『口が甘ったるくなる』とか文句を言うくせに、どうしたんだ?」


義元が扇子を広げて口元を隠した。
くすくすと笑う仕草は品が良く、優雅だ。


義元「ああして普段通りに仕事をしているように装(よそお)っているけど、二人共舞が心配すぎて、お茶と饅頭を取違えるほど動揺しているんだよ」

幸村「いくら心配でも茶と饅頭は違い過ぎるだろ…。
 それにどうしてくれるんだ、信玄様の今日の菓子だったのに。大体あの人、『頭を使うと甘い物が欲しくなる』ってうるさいんだぞ?」


こんな非常時に甘味屋まで買いに行っている場合ではないと、幸村が大仰にため息を吐いた。


義元「じゃあ俺が買ってきてあげる。饅頭だけでいいの?」

幸村「……義元はあいつがいなくなっても心配じゃないのかよ」

義元「これでも心配しているよ。俺に情報を持ってきてくれる人達は城には居ないんだ。
 甘味屋に言ったついでに芝居小屋に行ってくるよ。
 確か今日、安土から越後に旅芸人の一団が到着するはずなんだ。道中何か見なかったか聞いてくる」


義元はするりと立ち上がり、広間を出ていった。

幸村はそれを見送って元の場所に戻ると、相変わらず謙信が饅頭を食しながら仕事をしていて、兼続は自分の過ちに気付かず、無表情で座っている。


幸村「ったく、謙信様も兼続も、心配なら心配だって言えばいいのによ」


これ以上大ごとが起きないよう、幸村は二人を見守っていた。


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