第31章 耳掃除をしよう(春日山勢)
佐助「耳掃除の習慣がない時代だからね、興味を持つのは仕方ないよ。
舞さんにわざわざ来てもらうのが申し訳なかったから、一応俺がやろうかと提案もしてみたんだ」
「反応はどうだったの?」
佐助「何故か却下された」
『幸村は俺でも良いって、やらせてくれたけどね』と、佐助君は少し嬉しそうだ。
(うーん、確かに男同士で耳掃除って聞かないな……って、真面目に考えてる場合じゃなかった!)
そんなこと考える前に断らなきゃいけない。現代のような時速ウン百キロの交通機関があるわけじゃないんだから、耳掃除のために越後まで行きたくない。
「耳掃除で越後まで行くのはちょっと…。
ちょうど今日から5日間のお休みをもらってるんだけどさ、信長様に『越後に行きたい』って言って許可が出るとは思えないし……」
佐助「今日から5日間も休みなの?」
佐助君の目が眼鏡の奥でキラリと光った。
(これは絶対『丁度良かった』って期待されているっ!)
「ここ3か月くらいフル勤務、休み時間なし、残業付き、休日ゼロだったの。
さすがに働きすぎだって秀吉さんのストップが入っちゃって、まとめて休みを貰うことにしたの」
佐助「軒猿も相当ブラックだと思っているけど、安土の針子部屋もそうなのか…」
同情の色を受かべられたので誤解をとくために首を振った。
「たまたまだよ!注文が次々入っただけで一年中こうだったら死んじゃうよ。
いつも秀吉さんが休め休めってうるさいくらいなんだから。
それより軒猿はブラックな職場なの?」
佐助「軒猿自体は交代制だし、長時間勤務もあるにはあるけど頻繁じゃないんだ。
問題は人が休憩や睡眠をとっていてもおかまいなしに斬りこんでくる人が居て…」