第30章 魔女の薬(兼続さんルート)(R-18)
「兼続さんと夫婦になっても私は春日山の針子ですから毎日登城しますし、仕事が遅い時は兼続さんのお部屋で過ごすこともあるでしょう。
お休みの日は謙信様に会いに行きますので、その時に父娘の時間を過ごしましょう?」
謙信「それもそうか…。なれば困ったことがあれば何でも言ってこい。
喧嘩した時は俺のところに来れば兼続のやつを成敗してやろう。
舞が側室を許せぬというなら兼続を説得してやる。
……父として頼ってくれ」
想いを寄せていた女に父として接することになった謙信は、気持ちに区切りをつけるように敢えて「父」を強調した。
わずかばかりの切なさに舞は気づくことなく吹き出した。
「私のかわりに成敗だなんて、ふふっ、兼続さんが大変ですね。
しかしこの時代で父になってくれる人が現れるなんて思っていませんでした。
不肖ながらよろしくお願いします」
謙信「ああ、よろしく頼む。
娘が幸せであるよう、表だって支えてやろう」
「そういう時は『陰ながら』って言うんじゃないですか?」
謙信「ふっ、あいにく陰ながら何かするのは得意じゃない」
「謙信様ったら……フフ!」
謙信の部屋に弾んだ笑い声が響いた。